!! ATTENTION !!

このシリーズは政宗様が16歳の女子高生になっています。
「……痛いよソレ」とか思っちゃった人は読まないでくださいませ〜。

#12に引き続きで恐縮なんですが……軽くERO入ってますので15禁とさせていただきます。
ここを飛ばして読んでも話の大筋に影響はありませんのでご安心をv















Hitmen'n Lolita #13









 政宗が自宅から私物を持ち込んだせいで、殺風景な事務所のようだった男所帯は一変した。

 食器棚には一回り小さな茶碗。いい匂いのシャンプーが置かれている風呂場と、真新しい歯ブラシ。

 シェーブローションと男物の整髪料しかなかった洗面台に、化粧水やら洗顔石鹸やらが並ぶ。

 愛用の、もこもこした感触のスリッパはアヒルの形。

 ソファの上にはピンク色のハート型をしたビーズクッション。

 極めつけは小十郎の部屋だ。

 彼の部屋で寝泊りするために、着替え以下私物が最も多く置かれることになったわけだが……。

 元々ものを置かない主義の彼の部屋なだけに、一気に『女の子カラー』に染まってしまったのだ。

 ライティングデスクには教科書類が置かれ、ペン立てには可愛らしい柄の文具。

 無愛想なパイプベッドの上にちょこんと乗っているテディベアを見た瞬間、成実は爆笑したものだ。

 むさい男の部屋のクローゼットに女子高校生の制服がぶら下がっている様は、綱元をして苦笑させる似会わなさで。

「……。」

 情けない顔でテディベアを抱き上げて振り返った小十郎に、水色地にウサギ柄のパジャマを着た政宗がはにかむように笑った。

(――あ、笑った)

 公園で気が済むまで号泣した後、家に帰るまで終始無言だった彼女だ。

 それでも泣いたことで多少スッキリしたのか、今は大分落ち着きを取り戻していた。

 泣きはらした後の頬の冷たさを思い出し、内心ほっとする。

 風呂上りでふんわりとシャンプーの香りがする髪を撫でてやり、テディベアを手渡した。

「明日から学校へ行くんだな」

「Yes. いつまでも休んでいるわけにいかないし、もう体調も良くなったから」

 試験、すっぽかしちゃったしな。そう続けて渡されたテディベアをぎゅっと胸に抱いた。

「そうか。いい子だな」

「……子ども扱いは、するな」

 ぷぅ。不機嫌そうに頬を膨らませてみせるのに小十郎はちいさく笑って。

「それは失礼した」

 昨日までに比べると大分豊かになってきた表情。最初に会ったときの刺々しさはなりを顰め、おそらくはこれが彼女本来の表情なのだ

ろうと思う。

 もっと、見せて欲しい。笑顔も、怒った顔も、拗ねる顔も。

 安心して、もっと沢山の素顔を。

「Good night. 小十郎」

「あぁ、お休み」

 布団に入り、テディベアを抱っこしたまま瞼を閉じるのを見届けて灯りを消した小十郎はそっと部屋のドアを閉めた。



「すっかり骨抜きじゃないですか。鼻の下、伸びてますよ」

「のわっ!」

「声、でかいです」

 ほんのり幸福感に浸りながらドアを閉めた小十郎の背後から、コーヒーをなみなみと注いだマグカップを持った綱元が声をかけた。

「い、いきなり声をかけるな」

「この程度の気配も感じられませんか? ……あーあ、鬼片倉もあんな小娘にデレデレするようでは終わりですね」

「誰がデレデレしてるんだ……」

「貴方ですよ貴方。だらしないったらない」

 はーっ。わざとらしく溜息をついて見せた綱元だが、眼鏡の奥の目は楽しげに細められている。

 リビングのソファに腰を下ろし、煙草に火をつける。背もたれに寄りかかり、上向いて紫煙を吐き出した小十郎は誰にいうともなくぽつりと

つぶやいた。

「久しぶりに人を殴っちまった」

 マグカップの中身を至福の表情ですすっていた綱元の眉が僅かに動く。

「珍しいですね。昔の暴れん坊の血が騒ぎましたか」

「今日、政宗の自宅に行ったんだが……」

「成実から聞きました。少し、酷な事をさせてしまったのかもしれませんね。それで、ご両親には?」

 成実が何処まで彼女の事情を語ったのか小十郎にはわからなかったが、普段からあまり感情を動かすことのない綱元が言葉尻に滲ま

せた同情の色におやと思う。

「父親だという男に会った」

 夕方のことを思い出し、心底厭そうに煙草をふかす。あのときの、下劣な言葉が耳について離れない。

「それで、殴ったと」

 綱元の声は、あくまでも穏やかだ。

「許せなかった、どうしても」

 あそこで政宗が止めなかったらと思うとゾッとする。一発殴るだけでは飽き足らず、重大な怪我をさせていただろう。

 だが、実際に手を出した云々は別として激しい怒りを覚えたことには全く罪悪感を覚えない。

「その人、よほど貴方の気に入らないことを言ったんですね。ヤクザ扱いでもされましたか」

「茶化すんじゃねえ。……なあ綱元、お前アレからどうやって立ち直った」

PTSDあれ?」

 マグカップから目線をあげ、難しい顔で天井を見上げている小十郎をじっと見つめる。

 いきなり何を――と訊きかけて、やめた。誰のことを指しているかなど明白なのだ。

 そして鬼庭綱元は、わかりきった事実をわざわざ訊ねるようなことをしない男であった。

「……治ってなんかいませんよ。うまく付き合う術を見出しただけで、ね」

 淡く微笑んで、ハートのビーズクッションを取り上げた。



 小十郎が電気を消してドアを閉じてから暫く。

 布団に入ったまま、政宗はまんじりとしない視線を天井に向けていた。

 表通りから入り込むネオンの灯りが眠りを妨げているというわけではない。

 自分よりも頭一つ分以上背丈の違う小十郎が使っていただけにベッドは広くて寝心地がいいし、煙草とコロンの香りがほのかに残る掛

け布は不思議な安心感をもたらしている。

(どうしよう……)

 眠れない理由は、別の場所にあった。

 夕方、養父に会ってしまったのがいけなかった。半分忘れかけていたのに、彼に会い触れられたことで忌まわしい熱が彼女の中で再び

首をもたげ始めていたのだ。

(そんなことしたくない)

 眉を顰め、かたく目を閉じる。が、そうすると首筋に押し当てられた唇の感触がより強く思い出されて慌てて瞼を開いた。

 風呂に入ったときに何度も何度も洗った場所だ。それでも触れられた場所から全身に広がってゆく痺れのような感覚に戦慄を覚える。

 寝るときでさえ外すことのない眼帯に隠された右目がずきりと痛んだ。

「……っ」

 それを合図にしたように、小さな火種だった熱は次第に劫火となって意識を埋め尽くしてゆく。

 パジャマの下の素肌がざわつく感触に、うっすらと頬を紅潮させた政宗は激しく首を振った。

 ――疼く。強制的に刷り込まれた本能が、ゆっくりだが確実に理性のタガを緩めてゆく。

(イヤだ。イヤだ!)

 心の中で叫んでも、もじもじと太腿を擦り合わせる仕草はもう我慢の限界を訴えていて。

 そろりと上げられた手がパジャマのボタンを外し、隙間から中に入り込んだ。

「んっ……」

 柔らかな乳房をやんわりと揉み、すでにつんと尖っている頂を指先で摘んだ途端背筋を走り抜けた快感に思わず声が漏れる。

 いちど触れてしまえば、もうその先を止めることは出来なかった。

 大胆になってゆく手の動きに合わせて乱れてゆく呼吸。恥ずかしさにきゅっと目を閉じ、喘ぐように開かれた唇が紅い。

 執拗に自らの胸へ愛撫を加える傍ら、もう片方の手が下に伸ばされる。

 ズボンの中に入り込んだ指先が、ショーツの上から秘所に触れる。じっとりと湿った割れ目をなぞり、布が張り付いたために形を浮き上

がらせている蕾をつついた。

「あ……ん」

 布越しのもどかしい感覚に腰が物欲しげに揺れてしまう。

 躊躇いがちに足を広げ、何度も指先で擦ると、

(あぁ……もう、ダメ……)

とうとう耐え切れなくなったのか、政宗はショーツの中に指先を滑らせた。

 くちゅ。

 濡れそぼった秘唇を割り開き、指を突き入れた。それだけで甘い声が上がりそうになるのを唇を噛んで耐え、早く終わらせてしまいたい

とばかりに激しくかき回す。

「はぁ、はぁ……んっ、あ……ふあっ」

 二本に増えた指をきつく締め付けた。何度も抜き差しを繰り返し、そのたびにしとどに溢れる蜜が指を濡らしてゆく。

(何も考えたくない)

 この愉悦を単純に受け入れることが出来たなら、どれだけ良かっただろう。

 欲望を抱くことも、行為に耽ることも、それ自体は罪ではないのに。

(きもち……いい……っ)

 養父によって教えられた、という事実が政宗に罪悪感と過度の羞恥を植え付けていた。

「あ、あ、あん……あぁっ!」

 絶頂を迎え、ひくひくと全身が痙攣した。深く指を挿入したまま、暫く快感の余韻に浸ってゆるく動かすうち情けなさのあまり涙が溢れてきた。

 どんなに否定しても、忘れようと努めても。この疼きと快楽からは逃れられないのかもしれない。

 なんて、穢らわしいことだろう。なのに、止められない。

 のろのろとはだけた衣服を直した政宗は、布団の中で胎児のように丸くなると声を殺して泣いた。



 翌朝。何事もなかったように制服に着替えて顔を洗った政宗は二人分の弁当を作り、未だに起きてこない成実の部屋のドアを叩いた。

「Good morning,成実。早くしないと遅刻するぞ。Wake up!」

「うぼあー……。あー、ぼん、うぃーす」

 寝乱れたTシャツ姿で目を擦り、盛大に寝癖のついた頭もそのままでドアを開けた成実はもうすっかり支度を整えている政宗に日本語

かどうかも怪しい挨拶。

「きょうもかわいいねー。大好き♪」

 ぎゅっ。

 寝ぼけているのか、焦点の合わないとろんとした目つきで政宗に抱きついた。

「あーもぅ、いいからさっさと着替えて……!」

 どかっ。

「下、穿けっっ!!」

「ぐふっ!」

 コーヒー片手に新聞を広げていた小十郎の耳に、まともに正拳突きを食らった成実が壁に激突する鈍い音が届いた。

「この変態! 信じられねえ……成実、テメェの朝メシは抜きだ!」

「ぅええええっ!? ちょ、待ってよ梵、そりゃないよ〜」

 朝から汚いものを見てしまったとぷりぷり怒りながらリビングに入ってきた政宗は唖然とする小十郎の視線に気付き、ばつの悪い

微笑を浮かべた。

「……Good morning」

「お早う。よく眠れたか」

「So-so. ご飯とパン、どっちを食べる?」

「すまん、朝は食べないんだ。あぁ、コーヒーは綱元が淹れたのがあるぞ」

 コーヒーマニアである綱元は、淹れ方にかなりの拘りがあるらしく政宗にさえやらせない。その代わり、その味と香りはプロ顔負けだ。

「三食ちゃんと食べないと身体に悪いぞ? 綱元はどうするんだ」

「じゃあ、私はご飯で。……いいですねぇ女の子がいるって。今までは各々勝手に自分のは自分でやっていましたから」

 煮えばなの味噌汁の香りをかいで目を細める綱元に、小十郎は「お前はいつもカロリーメイトだったじゃないか」と横目に突っ込む。

「だったら貴方もありがたく頂けばいいではありませんか。折角作ってくれたのに」



「んじゃ、いってきまーす」

「おぅ、行って来い。ちゃんと安全運転で行くんだぞ、政宗を後ろに乗せるんだから」

「わぁーってるって」

 ぺたんこの鞄を肩にかけた成実が鼻歌交じりに出てゆく。その後を追いかけて小走りになる政宗は玄関口に立つ大人二人を振り返り、

「……いってきます!」

ぺこ、とお辞儀をして出かけていった。



「いい笑顔をするようになってきましたね。まあ、あの話は後でするとして、例の件ですが」

 ドアが閉じ、再びリビングのソファへ戻った綱元は心配げに見送る小十郎にいいかげん仕事をしてくれと苦笑交じりに肩をすくめた。









To be continued...









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例のシーン(汗)を書いてて、何度PCの前で突っ伏したことか……何書いてるんだ自分_| ̄|○
裏にするかギリギリのラインだったのですが、彼女の闇の部分を表現するのにどうしても必要で、今回のような
載せ方になりました。

次回は明るく可愛く学園仕様で。