!! ATTENTION !!
このシリーズは政宗様が16歳の女子高生になっています。
「……痛いよソレ」とか思っちゃった人は読まないでくださいませ〜。
Hitmen'n Lolita #1
店を出て街路へ踏み出した途端降り出した時雨に傘を借りようと戻りかけたが、どうせ帰り道は遠いわけではない、とコートの襟を立て
急ぎ足になった。
既に終電も過ぎた時間だというのに週末の街はますます賑わってゆくようだ。老若男女、金持ちと貧乏人、純朴な観光客から怪しげな
密売人まで一切の別なく清濁併せ呑むこの街は、それがゆえの一種独特な猥雑ともいえる空気を纏っている。
左頬に傷跡を持つこの男は誰をも受け入れるくせにその実冷たい街の雰囲気を気に入ってもう長いこと此処を根城にしているのであった。
顔見知りの客引きが手を挙げて挨拶(ついでに「可愛い新人が入ったけど、どうだい?アンタなら安くしとくよ」と誘いかけてきた)してくる
のを目線だけで返し軽く首を横に振る。
暫くそれは必要ない気分だった。大きな仕事を終えたばかりだ。若い鉄砲玉ではないが『掃除』の後はどうしても己の裡にある戦いを好む
血の収まりを付けられずにいた。
そんなときに女を抱けばどうなるか、今までに泣かせてきた何人もの愛人達を思えばおのずから解ろうというものだ。
住処にしている古い雑居ビルが眩しいネオンと看板の間に見えてくる。コートの隠しから取り出した煙草に火をつけ、ぷかりとふかせば
強まり始めた雨に火が落ちかけて。
これは、通り雨じゃなさそうだ。今夜はもうさっさと寝てしまおう。
雨は、あまり好きではない。
(『――!』)
何気なく通り過ぎた人気のない路地の奥から、なにやら叫び声のようなものと激しい物音が聞こえた気がして、男はつと足を止めた。
耳を澄ますと、それは確かに数人でなにやら争っているようだ。
喧嘩なら掃いて棄てるほど繰り返される場所であるから、ただのそれなら気にもせず流してしまうところだが、叫び交わされる声の中に
若い女性のものが混じっているのに煙草を咥えたまま軽く舌打ちする。
(面倒だ。適当にサツを呼んでおくか)
こんなところへ来る女のほうが悪い、とも思う。明るい表通りなら都会に慣れない者でもそれなりに楽しめる場所だが、一歩裏道へ踏み
込んだが最後、あまり柄のよろしくない連中がたむろしているのだから。
(『テメェ、ナメた真似してんじゃねえよ! ……死ねっ』)
「……あァ?」
女の声は悲鳴のほうかと思いきや。
(『うわあぁっ! や、やめてくれ!!』)
怯えた叫びを上げているのはチンピラであった。
「面白ぇ。見物でもしてやるか」
「おぉりゃあっ!!」
暗い路地には既に数人の男達が転がっている。頭から血を流して昏倒している者、強烈な金的蹴りを喰らったのだろう、身体を折って
悶絶している者(思わず心の中で合掌してしまう。そりゃあ痛かろう……)、その他の者も似たような状態で。
路地の最奥部には店舗ビルの裏口がありゴミやビールケースの置かれたそこはほんの少し広くなっていて、窓から零れる灯りで淡い
スポットライトが当たっているように明るい。そこでチンピラたちの最後の一人が相対しているのは。
(……女子高生?)
やや茶色味を帯びた短い髪。ほっそりとした体躯。どこぞの私学のものだろう、上品な真珠色のブラウスに蒼いチェック柄のプリーツスカート
(裾は恐ろしく短い)、スカートと共布のリボンタイに黒いオーバーニーソックスといういでたち。一際目を引いたのは、前髪に隠された右目を覆う
医療用の眼帯だ。片目で5人もの男達を叩き伏せたのだとしたら、これは只者ではない。
年のころは15、6といったところか。こんな時間に制服のままでいるなんて、『売ってる』娘かと思われたが状況からしてそうでもないらしい。
愛らしい見た目に反して男のような言葉遣いと素人の喧嘩殺法というより一端の格闘家じみた身のこなしに興味を惹かれた男は地面に這い蹲る
身体を容赦なく踏みつけながら二人に近づいた。
明らかに命を奪う意図で首筋へと放たれた手刀を辛うじて避けたチンピラが、畜生ッと叫んでジーンズの尻ポケットからバタフライナイフを
取り出した。僅かな灯りを反射してぎらりと光る、凶悪な刃。
刃物を出され、びくりと細い肩を震わせた少女はそれでも猫科の生き物を髣髴とさせる独つ目をすうっと細めて上体をやや沈めた。
銃器の扱いから格闘戦まで、あらゆる戦闘技術を会得していた男は、彼女の軸足の重心移動を見て取り後ろ回し蹴りを浴びせるつもり
であると判断。後ろ回し蹴りは強烈な攻撃だが、その分隙が大きい。ナイフを目にして焦っているのか。
例のチンピラとて偶然で最後まで立っているわけではないようだ。鮮やかな手つきで回転したナイフが雨粒を弾いて回し蹴りを放つための
動作に入った少女を襲う。
(しようがねえな。見ていられん)
短くなった煙草を水溜りに投げ捨てる。じり、と小さな火が雨水に消えると同時に翻る濃茶のコートの裾。背を向けているチンピラは
気付かぬまま。逆に、男のほうを向いていた少女の目が驚きに見開かれた。が、すでに勢いの付いた右足は止まらない。
「そのへんでやめておけ」
『!!』
気配も、その動きさえも見えない、滑るように素早い踏み込みで二人の間に割って入った男はチンピラのナイフを持つ手首を右手で捕らえ、
裂帛の気合いとともに叩き込まれた蹴りを左腕で受けていた。唐突に現れた闖入者に殺し合い寸前になっていた二人の気勢が殺がれる。
「んだよオッサン、邪魔すんな!」
手首をつかまれたチンピラは、びくとも動かない手を引き剥がそうと必死になって喚く。
「オッサン、じゃねえよ」
元々いかつい顔を更にしかめた男はチンピラの手首を万力のような力で締め上げた。
「ぐあぁっ、痛ぇ!!」
激痛に、手からナイフが滑り落ちた。荒れたアスファルトに落ちたそれを路地の隅へ蹴りやって、
「行っちまえ」
短い言葉に漂った殺気。ややたれ気味の眼の底に宿る物騒な光にチンピラの顔色が見る見るうちに青くなる。コイツはヤバいと悟ったのか、
ナイフを取り落としたために放された手をさすりつつ後ずさり、それでも何か言わずにはいられないらしく、
「う……お、覚えてやがれ!」
ステレオタイプな捨て台詞を残し、チンピラは路地の外へとまろぶように駆け去った。
倒れた仲間に蹴躓きながら助け起こすこともなく一目散、という様子を小さく鼻で笑って一瞥し、今一人の方へ顔を向ける。
必殺の蹴りを左腕で易々と止められてしまった少女はその姿勢のまま固まっていた。眼光の鋭さは未だ保っていたが、目の前の男が敵なのか
そうでないのか見極められず戸惑いの色を隠せない。
近くでよく見てみれば、前髪と眼帯で半分隠されているものの非常に美しい顔立ちをしている。これではああいった連中に襲われるのも無理は無い、
と男は口許を僅かに緩めた。
美貌を眺めるついでに、高く足を上げたために思い切り捲くれたスカートを見遣って。
「……で、アンタはどうするんだ? 水玉ちゃん」
「? ……っ!!」
一瞬、何を言われたのか解らなかったらしく戸惑いの色をさらに濃くした少女であったが、男の視線がスカートのあたりを彷徨っていることに
気付き真っ赤になって足を引き戻し――。
すぱーーーーん!
人類最速の攻撃が男の頬を強襲する!
……路地を濡らす雨はその勢いを増し始めていた。
To be continued...
ついに手を出したにょたいネタ〜v
しかも現代パラレルです。終わってます自分。
つか名前出てこないやん(笑)政宗にいたってはセリフが2つしか無いし。
ていうかね。
小十郎がただのセクハラ親父になってる。
……_| ̄|○ スンマセンちょっと切腹してきます